街を歩いていると、よく大道宝籤売りをみかける。小さな折り畳みのテーブルの横にべたべたと籤券を張ったベニヤ板を立てかけて、ほんとに商売する気あるのかいなと思えるようなオッさん・オバはんが捻もすのたりとしているのだ。オッさんによっては、籤券を帽子へヤマのように挟んでそいつを自慢げに被っていたり、何処から持ってきたのか豪勢なヴィクトリア調(?)のボロボロな肘掛け椅子にドテッと座って一心不乱に怪しげな雑誌を読み耽けっていたりする。概して商売への姿勢は極めて希薄で鷹揚な人々ばかりだ。彼ら彼女らは、決して自分から熱心に売ろうとはしない。露店代わりのテーブルの横にぼーっと立ち尽くして、人生と世界について深い瞑想と悔恨に入り込んでいるのだ。

実のところアレが公的に認められた販売店なのか、いわゆる無許可営業のストリートベンダーなのか、僕は知らない。
NYの宝籤は、よく小さなドラッグストアやイート・インが可能なデリのような所で売られている。うちのアパートの傍に有ったデリでも売っていた。一度、そこのオーナーに
「常連さんの中で誰か大当りした人、いるかい?」と聞いたことがある。オーナーはニヤリと笑いながら「大当りしたって、俺なら誰にも言わないね」と言った。確かにそうかも知れない。
セプテンバーイレブン以前には、ロアー・マンハッタン、トリニティ教会の近く、ブロードウェイあたりを歩いていると、世の中を斜っかいに見て生きているような大道宝籤売りたちを良く見かけた。考えてみると、あれって売れていたのかなあ。やっぱし金融の街だから皆さんマネーゲームがお好きなのかな。もしかすると意外と売れ行きは好調だったのかもしれない。時折、常連客らしきビジネスマンと宝籤売りのオッさんが談笑しているところも見かけたから、それなりに固定客がいて商売になっているのかも知れないね。WTCのすぐ傍にある公園があって、ロアー・マンハッタンでは、あの辺りでよくそんな大道宝籤売りのオッさん連中をみかけたもんでした。なんとなく昔の話になってしまいました。
ベンチに腰掛けるアタッシュケースを開いたビジネスマンのブロンズ像が置いてあるあの公園だよと言えば、きっと知ってる人は「ああ!あそこか」と思うだろうな。そう。あそこ。天気のよい暖かい日に、僕は公園の並びに100%野菜で出来たきわめて美味なるピタを食べさせる露店が出るんで(こいつも有名)それを買い込んで宝籤のオッさんの生態を思わずじっくりと観察しちまったことがある。
後日、ヴィレッジの飲み屋でその話をした。
「いや、なにしろ実に売れないんだな。これが。しかし、そんな逆風はものともせず、オッさんはじっくりと時の過ぎるままに時間を潰していくんだ。10時ごろから陽が沈むまで、何もせずにぼーっと過ごすんだ。まったく、暇人ってぇやつもあそこまで暇人となると凄いねぇ。呆れちまうよ。」とビール片手に僕が言うと。
「そんな暇人がいるわけない。マイクが見ていない間に、人間が入れ代わったりしてるんだよ。」とニューヨーカーの友達が反論してきた。
「いや、間違いない。ずうっと、ぼーっとしているんだ。間違いないよ。何故って、その暇人の親父がどうするか、俺は傍の公園から一日中ずうっと観察していたんだから。」
「はっはっはっ。そいつは、マイクのほうがはるかに暇人だぜ!」
モトネタの「野ざらし」って噺の枕を知らないから、大抵のアメリカ人はこのギャグで大笑いをする。
さてさて。このアメリカ産の宝籤というやつ。いかにもアメリカらしいデカい夢なので、NY観光のついでに、ひとつ土産話のネタということで買い込んでみたらどうだろうか?その参考にということで、幾つか有名どころを紹介したい。
一番有名なのは、いわゆるLOTTO というやつで、これは1から59の数字を6つ選ぶもの。もちろん独りで何枚でも買える。抽選日は毎週水曜日と土曜日、この日そわそわしている奴がいたら、そいつは絶対にLOTTO
フリークである。何といっても最高賞金額が300万ドルということで、その人気は絶大だ。
レストランでウエイトレスが言うままの番号を買ったら、それが大当たり!彼女にも幸運を分け与えてもらう権利はあるというので、賞金を半分、そのウエイトレスに上げたなんてぇ美談もある。こいつは映画にもなってるね。
PICK10は最高賞金額が50万ドルというもの。こちらは1から80の数字を10個選ぶタイプである抽選日は毎週月曜日から土曜までの6回。これも絶大な人気を誇る宝くじだ。
TAKE 5は最高賞金額が30万ドル。こちらは1から39の数字を5つ選ぶ。抽選日は火曜と金曜日となっている。
日本でもあるNUMBERS はNYには3桁の数字選ぶものと4桁の数字を選ぶものがある。抽選日は月曜日と日曜となっている。

これらはその時の売上金額から賞金の割合が決まる方式なので一定した額ではない。また、一等当選者が出なかった場合、その分繰越し加算になるから、本当に無茶苦茶凄い金額になることもある。
どうです?なんか聞いただけでもワクワクするでしょ?
日本でも宝籤ファンは根強くいるが、NYでも意外な人がLOTTO のマニアだったりする。僕も某誌のエディターに、ある日突然夕飯を奢ってもらってびっくりしたことがあるんだけど、彼が実は猛烈なマニアだったのだ。
「当たったんだよ。20年、宝籤をやってね。600ドル以上当たったのは、今夜が始めてさ。」彼は顔じゅう口にして喜んでいた。きっと、あの夜彼が使った金額は賞金以上だったに違いないと思う。
うちのアパートのドアマンも宝籤マニアで、実は彼から色々話しを聞いてこの稿を書いているのだ。彼も、たまあに当選すると目茶苦茶機嫌が良い。
察するに、そのワクワク感と当選したときの爽快感のために、彼らは宝籤にハマっているんですな。
ところで。待望の抽選結果だが、抽選日当日にTVならばWABC-7。電話は212,718,516,900 のいずれかのエリア・コードで976-2020で知ることが出来る。あるいはニューヨーク・タイムズなどの地元紙、ロットー販売店でも分かる。最近はインターネットでも流しているから、こちらが便利かも知れない。
http://www.nynewsday.com/features/lottery/wire/
はてさて。何と!貴女も!当選してしまった!どう受け取るか?この話もしなければいけませんな。
賞金が600ドル以下の場合。街のロト販売店で直接受け取ることが出来る。 600ドル以上の場合。街のロト販売店かクレームセンター212-383-1300に申告しなければならない。そうすると数週間後に貴方へ小切手が送られてくる。それを最寄りの銀行に持っていけば、貴女はその日から大金持ち!
またLOTTO の1等に当たった場合、貴女は3種類の受け取り方のうち、いずれかを選ぶ
ことができる。一括で受け取るか、26年間に渡って毎年分割で受け取るか、のいずれか。前者の場合、さまざまな手数料税金を引かれて、実質貴女のところへ渡るのは賞金額の40%程度。後者の場合は72%程度となる。
もちろん、これは米国内での税金。日本国内でも税金はかかる。お忘れなく。あくまでも外国における不労所得ですからね。こいつは凄い税率になる。そういや川端康成さんも、ノーベル文学賞で貰った賞金に膨大な税金が掛かるというので、欧州で思い切り散財してから帰国しておりましたな。
「国民の義務」ということで、貴女の幸運をみんなで寄ってたかって食い散らかすのです。
貴女の当たった宝籤で、貴女が行くはずもない道路の補修の一部が行われ、貴女もいずれは絶対に捕まるであろう交通標識の設営が行われるのです。はははは。
面白うて やがて哀しき 宝籤