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Mike Shiraishi 

 

 

子供たちのNY・アメリカ自然史博物館

大好きなメトロポリタン美術館の前で 2週間のNY観光について。彼女たちは自分なりにビジョンを持ってやって来たようだった。
 「自然史博物館はもちろん行くけど。ブルックリン植物園と動物園にも行きたいの。あやのがオカピーに会いたいんだって。」と姉ちゃんが、アパートのそばのCONWAYで滞紐中に着るものを買いながら言った。
 「なんじゃ、そのオカピーってぇのは。日本のタレントの名前か?」
 「日本のタレントがNYの動物園にいるわけないでしょ。」
 「脚がねぇ、シマウマで、胴体がロバなの。不思議な動物なの。」と妹が説明した。「アフリカにも少ししかいないんだけど、NYの動物園にはいるの。」
 「不思議な動物って、お前らほど不思議な動物は世の中に、そうは居まい。」
 「でも不思議なの!」と妹が強弁した。
 「わーぁった、わーぁった。そんじゃまあ、お前らとどっちのほうが不思議だか、比べっこに行こう。」
 その時まで僕はオカピーなる生き物を知らなかった。どうも妹のほうはマイナーなものが好きで、時折とんでもないモノの名前が彼女の口から飛びだしてくる。彼女は恐竜マニアでもあるんだが、一番のお気に入りはアンキロザウルスときてる。普通、恐竜が好きです!ときたら、ティラノザウルスかトリケラトプスでしょうに。
 「あれは、あなたの血よ。」とは嫁さんの弁。
 まずは到着翌日、定例の自然史博物館へ恐竜にご挨拶に行くことになった。
 しかしまあ、毎度ながら子供にジェットラグは無いのかというくらい元気で、朝早くから「お腹空いた」だの「オレンジ・ジュースが飲みたい」だの「お昼は何処で食べるの?」だのって騒ぎまくった挙げ句、終いには定番のつっ突きあいが本当の喧嘩になって、二人揃って泣きだす始末。「ジャリ」と言う文字を地でいくような二人である。
 「おメーら。ママ、居ないんだからな。自分で何を着てくか考えろよ。首からフンドシぶる下げてスカート穿かずにパンツいっちょで出かけたってパパは知らねえからな。」
 「首からそんなものぶる下げる訳無いでしょ!」とか言いながら昨日アパートの近くのCONWAYで買ったものを、どっちがどれを着るか喧嘩しながら着込んでいた。今年、中学2年と小学校6年の姉妹である。始めて彼女たちをNYへ連れてきたとき、二人は小学校3年と入学したての1年生だった。あの時は家族揃ってメーシーズのサンクスギビング・パレードを見にやってきたのだ。(その時の話は、メディアファクトリー社から「NY極楽マニュアル」として上辞)子供は、あっと言う間に大きくなってしまう。よく聞く台詞だけど、こいつは本当に実感だ。子供との蜜月時代は短い。大事にしなくちゃね。五月蠅くて腹の立つときもあるけどね。
 ドアマンに挨拶してから街へ出た。NYは桜の季節だ。まだ少し肌寒いが良い天気だった。プライベート・パークの横から石造りの階段を下りて42丁目へ出た。そしてそのまま西に向かって歩いた。グランド・セントラル駅から地下鉄に乗るつもりだった。
 NYの地下鉄は南北へ向かって開発されたもンだから、今でも東西に走る路線は数えるほどしかない。しかし唯一例外が42丁目で、ここは2本の東西に走る地下鉄が通っている。LとSである。Lはポートオーソリティ・バス・ターミナルを起点として、クイーンズを横断している路線だ。Sはタイムズ・スクエアとグランド・セントラル駅を結ぶシャトル便である。こちらは24時間営業ではないが、運行本数も多く便利な路線だ。僕たちはグランド・セントラル駅からSに乗るつもりだった。
 エレベータを下りていくと老修道女が小さな椅子に腰掛けながら寄進を乞うていた。目敏く見つけたお姉ちゃんが「パパ。早く、早く。」と僕から1ドル紙幣を持っていった。
「あやちゃんも!」と妹も欲しがった。
 グランド・セントラル駅の地下鉄の乗換通路には、こうした寄付を仰ぐ人々ばかりではなく、ストリート・ミュージシャンたちも多数出没する。大抵はジャズ系だが、こいつらが滅法上手い。一度、ガット・ギター1本でボサノバを歌うオバちゃんに出会ったことがあるけれど、思わず聞き惚れてしまうほど本物のプレイだった。東京の地下鉄もね、このくらいの粋な計らいをしてくれたらね、楽しいんだけど。
 地下鉄Sはマメに電車が発着している。乗って、すぐ次の駅が終着点のタイムズ・スクエアだ。僕たちはここで地下鉄C,Eに乗り換えるために、延々と地下通路をポートオーソリティ・バス・ターミナルへ歩いた。地下鉄Sのすぐ傍に乗換口がある1,9で79th St.まで出て、ブロードウェイから東へ歩いても良いんだけれど、とりあえずはC,Eに乗ることにしてたンでアップダウンのある通路をひたすら歩いた。この通路の途中にも不思議な芸のストリート・ミュージシャンや物売りのオバさんが突っ立っている。一度、ヴィクトロノックスのアーミーナイフを売っているオツさんがいて「ファイヴ・ダラー!」を連呼してたんで思わず買っちまったんだけど、家へ帰ってよく見てみたら見事紛い物だった。「名物に美味いもの無し。露天商に本物は無し」これは教訓です。
 地下鉄C,Eの発着ホームだけど、急行のAも同じホームへ入ってくる。これは気をつけたほうがよい。間違えてAに乗ってしまうと、59th St.の次は125th St. だから、あれよあれよという間にハーレムのど真ん中に運ばれてしまう。ホームに入ってくる電車の横に掲示してある車線番号をきちんと確認しよう。
アメリカ自然史博物館の最寄り地下鉄駅はB,Cの81st St.である。ついでにバスも表記するとM7,M10,M11,M79,M104 が最寄りバス停。地下鉄は外の景色が見えないからね、タウン・ウォッチングを兼ねるならばバスのほうが断然楽しいんだけど、やっぱり至便さを考えると、どうしても地下鉄に乗ってしまうなぁ。
 我が家の生ゴミ共も流石に地下鉄の中では騒がない。おなしく乗っている。81st St.に到着し、地上へ出るとすぐそこにシシカバブのストリート・ベンダーが出ていた。子供たちが大騒ぎするので、幾つも肉片が刺さった大きな櫛とコーラを三つを買い込んで、自然史博物館の横の公園のベンチに座って10時のおやつとした。櫛の先にはフランスパンまで刺さっている。限りなく焦げついていて、とんでもなく濃いソースがなすり付けてあった。「美味しいねぇ」とか子供たちは言い合ってるが、こんなもン日本に居たら絶対食べないね。
 「最初にすぐ恐竜のところへ行こう。バロザウルスさんに会いに行こう。」と妹が友達にでも会いにいくような調子で言った。
 アメリカ自然史博物館の恐竜コーナーは90年代に入って、長い間改装のために閉鎖されていた。したがって彼女たちは旧いそれを見ていない。お父さんの「すげぇんだぞ!」という噂ばかりが先行していたのだ。そんなこんなで、見事刷新してオープンした時に始めて此処を訪ねたときの子供たちの興奮の仕方は、まったく尋常じゃなかった。とくに恐竜マニアの妹が気に入ったのは巨大なバロザウルスで、出土した時そのままのように設置されたその上をガラス越しに上を歩いて見渡せる展示法に本当にびっくりしたようだ。
 恐竜の卵。足跡。皮膚の一部。見どころは一杯ある。大人だって何度見ても飽きない。
これって凄いことだと思う。僕たちはホールで入館料を払うと、そのままエレベータで4階まで昇った。
 どこか黴臭い過去の遺物が薄暗い穴倉に並べられているような、そんな陰湿な雰囲気が昔の恐竜コーナーには有ったが、今はきわめて近代的な清潔さと明かりに満ちた展示場に様変わりしている。もちろん相変わらずアメリカ自然史博物館の中では一番の人気コーナーだから見学者の数も多い。ホールに入ると、ちょうど小学生低学年の団体とぶつかって、僕たちは蜂の巣に飛び込んだような大騒ぎに巻き込まれた。
 傍若無人に飛び回るアメリカ製おジャリ様どものパワーは、遙かに我が家の2匹のそれを凌駕していて凄まじいものだった。驚嘆の声を上げる子供。ただただ駆けずり回る子供。ひたすらゲラゲラ笑いながら友達と大きな声でお喋りをする子供。まったく無秩序に、なおかつ何処か整然とした志向性を持って、彼ら彼女らは展示室全体に散らばっている。まあまったく圧倒されてしまうパワーだ。さすがに我が家の雑音発生器も、その勢いに呑み込まれて影が薄い。それでも少し緩っくりめのペースで見て歩いていると、小学生たちは飛んだり跳ねたりしながらバラバラと次のコーナーヘと進んで、展示室はまるでイナゴの大群が通りすぎたように静かになっていった。
 「すごいねぇ。うちの学校の一年生だって、もっと穏しいよ。」と妹。
 「なんか突然すーっと静かになっちゃって、耳が遠くなったみたい。」とお姉ちゃん。
 それぞれに感想を漏らした。僕はそんな二人の言葉に、子供たちも少しずつだけど大きくなって来てるんだなぁということを実感した。もうすぐお父さんのオモチャでいてくれる至宝の少女時代は終わってしまうんだろう。これってすごい損したような気分。
 そんな僕の感慨なんかお構いなしに二人は、ようやく自分たちのペースに戻ったようで「トリケラトプスを見にいこう!」と、どんどん先に進んでいった。
 子供たちと一緒に居られるときを大事にしなければ。ね!

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