Picture
Picture
Mike Shiraishi 

 

 

バルセロナは蚤の市が面白い

 カタルーニャ広場から地下鉄L1に乗ってGlories へ行く。駅で4つ目、たいていの観光案内用地図には載っていない地域で、バルセロナの蚤の市は開かれている。
 「蚤の市が面白いですよ。」自称スペイン通の某代理店のクリエーターが言った。広尾の飲み屋での話だ。
 「ほとんど昔の泥棒市の感じでしてね、あそこに行かなきゃ本当のバルセロナには出会えませんよ。」なるほど。広告屋の言うことだから話半分として、それでも行ってみる気にはなった。「すぐに判りますよ、行けば。」本当かよ。
 さて。彼の言うとおり地下鉄から地上に出ると、すぐに怪しげな露店が点々と並び、それを物色しながら辿って行くと蚤の市が開かれている場所へ数分で到着した。
 これが確かに、なかなか怪しげな雰囲気で、強烈な日差しの下、バラック造りの店や全くの露店が、少し低地になっている処へ重なるように軒を並べているのだよ。そのすぐそばにポンコツのバスや崩れかかった仕舞屋が幾つもあって、どうやら此処が彼らの生活の場らしい様子である。そして、市の端には何軒かバル兼レストランが有って、そこから何とも異国の雰囲気の音楽が流れてくる。こいつが、このノミの市全体のBGMとなっているのだ。売ってる奴も買ってる奴も、間違いなく裕福な人は一人もいない。埃っぽい雑然とした市場だった。
 売っているものは実に多岐に渡る。家具、日用品、工具、食器、衣料品、化粧品、絶対に動きそうにもない電気製品。そして靴。靴は新品から中古まで、あらゆるものが放り出すように置かれて売られていた。それと女性下着類、リネン類。こいつは地面に敷かれたシートの上に土埃と一緒にカクテルされて山積みになって売られていた。売っている人達も買い物客も、何かものかも気だるげで緩慢としていた。 聞くところによると此処は随分旧い市だそうで、今はすぐ傍らを高速道路が走るようになったせいで、置き忘れられたような何か場所に合わない雰囲気になってしまっているが、数百年に渡って綿々と生き残ってきた老舗中の老舗だという。地元にぴったりと密着した生活用品主体の蚤の市だ。
 それでも、いかにも今世紀初頭のものらしいガラス製品、陶器類、調度品などもポツリポツリと混じっていて、もしある程度目利きの人が見たら、かなり面白いものも実は沢山転がっているのかもしれない。僕が気になったのは色ガラス製のグラス。色違いで6脚の薄いワイングラスだった。旧いベネチァン・グラスかなあと思って、試しに売っている親父に話しかけてみたら、こいつがまったく英語が通じない。幾らなのかも判らなかった。しかしカタルーニャ人らしい、おおらかで優しい人柄をそこはかとなく感じさせる人達ばかりで、危険(!)という印象はまったく無かった。
 バルセロナの蚤の市は、いかにも土地の人間が土地の人間相手に、訳の判らないものを様々に売っているといった態の面白い処である。たまには広告屋の言うことも信用しようと思った。

§1995-2006 by Mike Shiraishi. All rights reserved.No part of this page may be reproduced byany means without written permission from the publisher. E-mail address all inquiries to: mike@mikebear.com